序  言

当辞書は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所において2007年夏に実施された言語研修の副教材『現代ウイグル語語彙集(附日本語-現代ウイグル語索引)』の増補改訂版です。この版では旧版の誤りを可能な限り正し、旧版では掲載がかなわなかった熟語を追加エントリーし、さらに文法概説(別項)を新たに盛り込んでいます。
当辞書は、現代ウイグル語をひととおり読み書きするために必要な語彙を可能な限り収録いたしました。収録語彙数は現代ウイグル語見出しで16,000語余りが収録され、また学習者の便宜のため、同一の語彙データを日本語見出しの形に整理した索引を配置いたしました(こちらの見出しは21,000語ほどです)。収録情報は現代ウイグル語見出し語、アラビア文字綴り、品詞情報、日本語訳、熟語、同義語、類義語、漢語ならびにロシア語等起源のものについては部分的に語源も収録いたしました。しかしながら、辞書のきわめて重要な要素である用例は、個別データの吟味をする余裕がなかったため収録しておりません。本書が「辞典」ではなく「小辞典」と称しているのはひとえにその理由によります。
本書の底本としては1982年にウルムチで刊行され、今日なお最も使いやすい辞書として定評のある『維漢詞典』、ならびに同辞書を下敷きにした労作である飯沼英三『ウイグル語辞典』(1992)ならびにHenry G. SchwarzのAn Uyghur-English Dictionary (1991)等いくつかの辞書を採用しました。当辞書はありていにいってこれら優れた辞書の焼き直しに他ならず、歴史用語を中心に多少クリティカルに訳語の検討を行ったものの、総体的にはオリジナルを凌駕するものにはなっておりません。また、中国では『維漢詞典』以降、『維漢大詞典』(2006)をはじめ重厚な辞書が複数出版されています。この点はあらかじめお断りしておきたく思います。当辞書の意義、利点を挙げるとするならば、それは既刊の日本語対訳辞書がもはや入手困難である昨今の状況にあって、一定のボリュームの小辞典を日本語見出し索引を付して提供した点にあるといえるでしょう。日本語索引は小辞典の見出しと訳語を機械的に反転させたものであり、コンピュータ処理上の制約から濁音と清音の区別も行ってはおりません。したがって索引は日本語-現代ウイグル語の簡易辞書として用いるには甚だ心もとない代物ではありますが、この分量のものとしては全く類例が存在しない現状に照らすならば、一定の利便性があるものと考えます。
当辞書が広く利用され、ひとりでも多くの方が現代ウイグル語と、その話し手である私の友人たち-ウイグル人の文化・世界に親しんでいただけることを心より希望します。
2008年11月
菅 原  純 (編者)
 
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